2013年4月18日木曜日

「ソースの二度付けは禁止やで!」が商標登録されました。

 串カツ屋における「ソースの二度付け禁止」というルールは、我々大阪人が大阪で平穏に生活する上での「暗黙のルール」です。

特に、通天閣のある新世界界隈の串カツ屋では、壁やソース容器に貼られた張り紙に、このルールが明示されており、ルールを守らないと店のおっちゃんだけでなく、隣の席のおばちゃんからも怒られます。

ジャンジャン横町のある店では、店主から罵詈雑言を浴びせられたうえで退店を命ぜられます。


(「ディープ大阪・新世界に住む」さんのHPからお借りしました。)


で、今回のテーマは、「ソースの二度付けは禁止やで!」という商標が登録になったという話です(商標権者は、大阪で有名な串カツ屋のチェーン店の運営会社?です)。

ここまで読んで、
ウチの店の「二度付け禁止」の張り紙は剥さなければいけないのか?
店内で「二度付け禁止やで!」と注意したら商標権侵害で訴えられるのか?
と思われた方。

下記の記事を読んで頂き、不安解消に少しでもお役に立てれば幸いです。


●事案の経緯

特許庁に対して商標出願するときには、出願書類に「商標」と、「その商標を使用する商品」或いは「その商標を使用するサービス」を記載します。

商標法では、「商標を使用する商品」を「指定商品」といい、「商標を使用するサービス」を「指定役務」と言っています。

本事案では、商標「ソースの二度付けは禁止やで!」について、「串揚げ」&「串揚げ用のソース」を指定商品とし、「串揚げ料理の提供」を指定役務とする出願が行われました。

審査の過程で、出願人は指定役務「串揚げ料理の提供」については削除し、最終的に指定商品「串揚げ」&「串揚げ用のソース」について商標権を得ました


●商標権の権利効力について?

商標権は、指定商品または指定役務について登録商標を独占的に使用する権利です。

つまり、本事案で言うと、商標権者は、「串揚げ」&「串揚げ用のソース」について登録商標「ソースの二度付けは禁止やで!」を独占的に使用する権利を持っています。

また、商標権は、登録商標と類似する範囲内にある商標についても第三者が権原なく使用することを禁止・排除する効力を有します。


●商標の使用について?

ここからが少し難しい話となるのですが、商標法における「商標の使用」とは、「自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で商標を使用すること」と解されています。

つまり、本事案で言うと、登録商標「ソースの二度付けは禁止やで!」と同一、或いは類似する商標を、指定商品「串揚げ」「串揚げ用のソース」と同一、或いは類似する商品について、商品を区別するような態様、或いは商品の出所を示すような態様で付した場合には「商標の使用」となります。

まだまだ判り難いと思うので、より具体的に言うと、串揚げの包装容器、或いは串揚げ用のソースが入った容器に、「ソースの二度付けは禁止やで!」という言葉を、商品名のように付した場合には「商標の使用」となります。


●串カツ店の「ソースの二度付け禁止!」の張り紙は許されるのか?

いよいよ最重要ポイントです。

串カツ屋における「ソースの二度付け禁止!」或いは「ソースの二度付け禁止やで!」の張り紙は、串カツを食べるときのルールやマナーを表したものにすぎず、「串カツ」という商品の商品名を示すものではありません。

してみると、串カツ屋における「ソースの二度付け禁止!」或いは「ソースの二度付け禁止やで!」といった張り紙の表示は、先に述べたような「自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で商標を使用すること」には該当せず、商標法上の「商標の使用」には該当しないと断言できます。

要は、「ソースの二度付け禁止!」の類の張り紙は、ルールやマナーといった注意書きに過ぎず、串カツの商品名として使っているわけでは無いということです。

したがって、串カツ屋が「ソースの二度付け禁止!」或いは「ソースの二度付け禁止やで!」と記載された張り紙を貼ることは、本件商標権を侵害するものでは無く、全く問題が無いという結論に至ります(張り紙を剥す必要はありません)。

同様の理由で、店内で「ソースの二度付け禁止やで!」と口頭で注意しても、全く問題ありません。

串カツ屋が出す皿に「「ソースの二度付け禁止!」或いは「ソースの二度付け禁止やで!」と記載されている場合も、これら記載は単なる注意書きであると考えられるため、上記の張り紙の場合と同様に問題ありません。

●持ち帰りの容器には注意が必要

串カツ屋さんが、持ち帰りの容器に、「ソースの二度付けは禁止やで!」や「ソースの二度付け禁止!」と大きく表示した場合には、本件商標権を侵害すると判断される可能性があります。

具体的には、お持ち帰りの容器に、串カツ屋の店名を大きく表示したうえで、「ソースの二度付けは禁止やで!」と小さく記載した場合には、店名の表示の大きさと「ソースの二度付けは禁止やで!」の表示の大きさの比較等により、「ソースの二度付けは禁止やで!」の表示が「商品名を示しているもの」となった場合には、商標権の侵害と判断される可能性があります。

商品名ではなく、「注意書きを洒落で示したもの」と判断された場合や、「単なる説明文である」と判断された場合には、商標権の侵害とはなりません。


長々と書きましたが、本事案から皆さんに知って頂きたいことは、以下の二点です。

商標権の効力は、文字や図柄等で構成される「商標」だけでなく、指定商品或いは指定役務との関係で決まること(登録商標と同一や類似の商標を使用していた場合でも、指定商品と非類似の商品について使用していた場合には、商標権の効力は及ばないということ)。

他商品の識別力を発揮し得る態様で商標を使用した場合にのみ、商標法上の商標の使用となるということ(単なる説明文や注意書きとして商標を使用しても、商標法上の商標の使用にはならないということ)。

以上です。
(弁理士 森本聡)


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