2013年4月30日火曜日

特許の仮想表示(virtual patent marking )について


1.はじめに

「pat.●●●●」という表示や、「特許番号●●●●」という表示が、製品の筐体表面、或いは製品のパッケージに付されていることがあります。
物理的特許表示の例


これらは「特許表示」と呼ばれるものです。

我国の特許法では、特許権者は特許に係るものに特許表示を付するよう努めなければならない、と規定されているだけであり(特許法第187条)、特許表示は“義務”ではありません。

したがって、我国の特許法では、特許表示をしていなくても、特許権者が不利益や罰を受けることはありません。

しかし、特許表示を行うことによって、第三者の模倣抑止効果が期待できます。
需要者に対しては、その製品が特許発明に関する優れた製品であることをアピールできます。

それでは、その製品が、一つの特許発明だけでなく、複数の特許発明が採用された製品である場合には、特許表示はどのように表示すればよいのでしょうか?
パッケージ等に、幾つもの特許番号を長々と記載する必要があるのでしょうか?

そこで、今回、紹介するのは、米国の改正特許法で認められた「virtual patent marking(仮想表示:以下、「virtual marking」と記す」という方法です。

「virtual marking」とは、名前の通り、インターネットのウェブページで特許情報を公開するという方法です。
製品やそのパッケージには、ウェブページのURL情報(アドレス情報)のみを掲載しておきます。

これは、現行の我国特許法で認められた方法ではありません。

しかしながら、「virtual marking(仮想表示)」を採用することで、製品パッケージ等にアドレス情報のみを掲載しておけば足りるため、製品パッケージのデザインの自由度が増すというメリットがあります。

加えて、複数個のうちの一つの特許権が切れた場合には、ウェブページ上の特許情報を変更すれば足り、そのたびに製品パッケージを変更する必要が無くなるため、パッケージ変更コストを削減できる、というメリットもあります。

それでは、米国特許法で定められた「virtual marking」を、実務上の注意点と共に、簡単に解説します。




2.「virtual marking」の具体的方法

(1) virtual markingの概要

上記のように、virtual markingでは、製品やそのパッケージには、ウェブページのアドレス情報のみを掲載します。
そして、上記アドレス情報でアクセスできるインターネットのウェブページ上に、特許番号等の特許情報を公開します。

(2) ウェブページは無料でアクセスできるものでなければならない。

これは、米国改正特許法で『特許権者,及び特許権者のために若しくはその指示に基づいて,合衆国において特許物品を製造,販売の申出若しくは販売する者,又は特許物品を合衆国に輸入する者は,その物品に「patent」という文字若しくはその略語「pat.」を特許番号を付して貼付することによって,または、その上に、「patent」の文言または略語「pat」を、アクセス費無料で公衆がアクセス可能なインターネット上に掲載するアドレスと共に付し、特許物品を特許番号と関連付けることにより、又は物品の性質上,そのようにすることが不可能な場合は,当該物品若しくは当該物品の1 又は2 以上が入っている包装に同様の通知を記載したラベルを付着させることによって,当該物品が特許を受けていることを公衆に通知をすることができる。』と規定されていることに拠ります(米国特許法第287条)。
したがって、有料のウェブページに特許情報を公開しても、「virtual marking」とは認められません。

(3) 最適なアドレスについて

「virtual marking」に関する複数のウェブ情報によれば、製品やそのパッケージに表示されるアドレス情報は、どのようなものであっても良いというわけではなく、‘patent’や‘pat.’の文字を含むものであることが好適であるとされています。

つまり、「virtual marking」(仮想表示)とは、従来の物理的表示に代わるものであるため、製品のパッケージ等に表示されるアドレス情報は、一見してそれが特許に関する情報であると判るものであることが好ましいと言えます。

したがって、好ましいアドレス情報としては以下のようなものが考えられます。
1. patent.companydomain.com
2. pat.comapnydomain.com
3. www.companydomain.com/patent/
4. www.companydomain.com/pat/

尤も好ましい表記は、「1」或いは「2」です。
これは、最初に‘patent’や‘pat.’の文字がくることと、これら文字に続いて会社情報に関する‘comapnydomain’がくるため、会社が保有する特許情報に関するアドレスであることが明確となるためです。

「3」「4」は、最後に‘patent’や‘pat.’の文字がくるため、これら文字に製品購入者が気付かず、単なる会社紹介のアドレス情報であると誤解されるおそれがあります。

(4) 好ましくないアドレスの表記

www.companynamepatent.com」の表記
この場合には、‘patent’や‘pat.’の文字が独立していないため、米国特許法で認められた「virtual marking」であるとは認定されないおそれがあります。

patent:www.randomdomain.com」(‘randomdomain’は任意のドメイン)
私見としては、米国特許法第287条の「「patent」の文言または略語「pat」を、アクセス費無料で公衆がアクセス可能なインターネット上に掲載するアドレスと共に付し、」を充足するもののように思えるのですが、これは不適であるとする意見が散見されました。

(4) 全ての製品には、個別のvirtual markingを付与することが最適

すなわち、‘patent.company.com / model●●●/’などのように、製品毎に個別のvirtual markingを付与することが最適です。

(5) ウェブページに表示される特許情報等

アドレス情報に基づいてアクセスできるウェブページには、以下のような情報が表示されるようにしておくことが好適です。

1. 製品名 
2. モデルまたは固有のID
3. "次の米国特許は、この製品に適用されます"と言うテキスト表示
4. 米国特許番号のリスト

(6) ウェブページに求められる機能

ウェブページのシステムは、以下のような機能を備えるものであることが好適です。

1. 正確な製品クレームを見つけることが容易であること。
2. ハッキングに対するセキュリティ機能を備えていること。
3. 公開履歴を追跡し、証明可能な機能を備えていること。 
4. 訪問者の活動ログの取得機能を備えていること。




3.まとめ

以上のように、米国特許法に沿った「virtual marking」は、色々と制約があるようです。
しかしながら、米国市場では無く、我国の市場のみに供給される製品に、「物理的表示」に代わって「仮想表示」を付することには何らの制約もありません。

なお、米国特許法の「virtual marking」は、始まったばかりの制度ですので、実務上は、今後の裁判例などを見守っていく必要があります。

以上
(弁理士 森本聡)

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