2013年5月20日月曜日

「デザイン」と「意匠」の違い

先週の土曜日に、クライアント様が企画したデザインを学ぶ研修会に参加させて頂きました。



「明治村」で明治~昭和初期の近代建築を見学し、その後に谷口吉生氏が設計した「豊田市立美術館」を見学しました。


西洋建築を取り入れて和洋折衷で建てられた明治や大正時代の建築物、或いは個性的な装飾が施されたフランク・ロイド・ライト氏による帝国ホテルの中央玄関。

個性的な装飾が施された帝国ホテルの中央玄関


そして、徹底した無駄や装飾を排したモダニズム建築である「豊田市立美術館」。

豊田市立美術館


これら「近代建築」と「モダニズム建築」のギャップは、「建築」を学んだことが無い私にも「建築技術の進歩発展」「素材の進歩発展」「空間の使い方」などという言葉では足りないほどのダイナミックな変化が、現在進行形で建築の分野で起こっていることを教えてくれるものでした。


そして、この研修会のときに、ふと以下のような言葉が頭に浮かびました。



「デザイン」って、意匠法の「意匠」と違うんだ』と。



意匠法を学んだ方はご存知だと思いますが、意匠法上の「意匠」とは「物品の美的外観」です(意匠法2条1項)。
そして、意匠法上の「物品」とは「有体動産」であると解されています。



このため、「不動産」である「建物(建築)」のデザインは、意匠法の保護の対象にはなりません。
換言すれば、「建築のデザイン」を特許庁に意匠登録出願しても、特許庁は意匠権をくれません。


従って、意匠法の「意匠」とは、「デザイン」の一部ということになり、「デザイン」と意匠法の「意匠」とは別物だということになります。



加えて、「建築」という外観形状が大きいだけでなく、その中に設置され使用される多種多様な物品や内装等に多大な影響を与える、根本となる「建築のデザイン」を、意匠法は保護対象から排除しているということになります。



実際、建築の内装として使用される照明、扉、ベッド等のデザインは意匠法の保護対象となります。

また、使用時には不動産となるものであっても、販売時に動産的に取り扱われる、門柱、水門、石灯籠、墓石、家屋、滑り台、鉄塔、組み立て橋梁、組み立てバンガロー等は、意匠法上の物品と認められています。エスカレータ等も意匠法の保護対象となります。


しかし、残念ながら、本流とも言える「建築のデザイン」は意匠法の意匠対象として認められていません。


我々弁理士が、デザインの本流ではない傍流の「意匠」だけを扱っているにすぎないことを知り、残念な気がして、ちょっとショックを受けました。


なお、「建築のデザイン」は、著作権の保護対象となり得ます。
但し、それは下記のように「建築芸術」のレベルに達したときだと判示されています。

『シノブ設計』建築設計図事件
「建築の著作物」とは(現に存在する建築物又は)設計図に表現されている観念的な建物自体をいうのであり、そしてそれは単に建築物であるばかりでなく、いわゆる建築芸術と見られるものでなければならない。

建築芸術」と言えるか否かを判断するにあたっては、使い勝手のよさ等の実用性、機能性などではなく、もっぱら、その文化的精神性の表現としての建物の外観を中心に検討すべき

『ダルニエ・ダイン』事件
著作権法により「建築の著作物」として保護される建築物は、同法2条1項1号の定める著作物の定義に照らして、知的・文化的精神活動の所産であって、美的な表現における創作性、すなわち造形芸術としての美術性を有するものであることを要し、通常のありふれた建築物は、同法で保護される「建築の著作物」には当たらないというべきある。

一般住宅が同法10条1項5号の「建築の著作物」であるということができるのは、客観的、外形的に見て、それが一般住宅の建築において通常加味される程度の美的創作性を上回り、居住用建物としての実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となり、建築家・設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得せしめるような造形芸術としての美術性を備えた場合と解するのが相当である。


以上
(弁理士 森本聡)

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