2013年5月13日月曜日

ニッセン(4本線)vsアディダス(3本線)のストライプ商標をめぐる争い


You Tubeにロシア語で「中国産の新発明」というタイトルの動画がアップされて話題になっています。

「モスクワで入手した中国産の靴の「AIROLA」のロゴを剥がすと、世界的に著名なドイツのスポーツ用品メーカーであるアディダスのロゴが出てきた!」という内容です。







この中国メーカーは何をしたかったのでしょうか?
税関での差止めを免れるために「AIROLA」のロゴを貼っておき、税関を通った後でこのロゴを剥して、ロシア国内では「adidas」として売るつもりだったのでしょうか?


動画を見ると、靴の左右の側面には白色の3本のストライプが入っています。

この3本のストライプについて、アディダスは、我国で商標権を取得しています。
つまり、アディダスは、靴を指定商品とする3本のストライプについて、我国特許庁に対して商標登録出願を行い、以下のような種々の商標権を取得しています。














で、今回の話は、通販会社のニッセンが「靴について4本線」の商標権を取得したところ、アディダスが「ニッセンの4本線の商標権は無効だと訴えた事件」です。

無効だと訴えられたニッセンの登録商標(本件商標)は、以下のようなマークとなっています。
登録第4913996号





アディダスは、「ニッセンが4本線の本件商標を靴に使用すると、需要者は、著名なアディダスの3本線(スリーストライプ)の登録商標と間違えるおそれがあるから、本件商標は無効だ。」と訴えました(商標法4条1項15号違反)。

また、アディダスは、「ニッセンの4本線の本件商標は、アディダスの3本線の登録商標の信用力や顧客吸引力にフリーライドするなどの不正の目的をもって採択されたものであるから、社会一般道徳や国際信義に反するもので無効だ。」と訴えました(商標法4条1項7号違反)。


これに対して、特許庁は、本件商標(4本線)と引用商標(3本線)とは、異なる商標であるから、需要者は出所の混同を生じないと判断しました。

また、特許庁は、本件商標(4本線)はアディダスの3本線の商標とは異なるものであり、フリーライドなどの不正の目的を持って採択されたものではなく、公の秩序を害するものではないから、本件商標の登録は、商標法4条1項7号に違反したされたものということはできない。」と判断しました。

特許庁の審決に納得がいかなかったアディダスは、知財高裁に訴訟を提起しました。


そして、知財高裁は、以下のように判断して、アディダスの訴えを認め、特許庁の審決を覆して、ニッセンの本件商標は無効だと判断しました。
平成23年(行ケ)第10326号 審決取消請求事件


上記(2)イに認定した事実によれば,運動靴の甲の両側面(靴底とアイレットステイを結ぶ位置)にサイドラインとして付されたスリーストライプス商標(細部のデザインの相違を捨象した3本線を基調とする商標)は,スリーストライプという語が需要者の間に用語として定着していたかはともかく,本件商標の登録出願時である平成17年5月25日及び登録査定時である同年10月28日において,我が国において運動靴の取引者,需要者に,3本線商標ないしスリーストライプス商標といえばアディダス商品を想起するに至る程度に,アディダスの運動靴を表示するものとして著名であったものと認められる。スリーストライプス商標の具体的な構成には,使用時期や製品によって,ストライプの長短,幅,間隔,傾斜角度,輪郭線の形状等,細部のデザインが異なる様々なものが存在するが,これら細部の相違は,スリーストライプス商標の基本的な構成である3本のストライプが与える印象と比較して,看者に異なった印象を与えるほどのものではないというべきである。

本件商標は,上記(2)アのとおり,細長い4本の台形様ストライプからなるものであるが,その指定商品「履物,運動用特殊靴」に属する運動靴においては,同ウに認定したとおり,靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用され,そのような態様で付された場合,商標の上下両端部における構成が視認しにくく,また,4本線の部分とそれらの間に存在する3つの空白部分につき,4本線か3本線かが紛れる場合が見受けられるのであり,その場合,参考図(別紙記載11a,b)のような構成のものと区別することが困難であるともいえる。






・・・そうすると,運動靴の甲の側面に付された本件商標に接した取引者,需要者は,本件商標の上下両端部における構成が視認しにくい場合や,本件商標から,4本の細長いストライプではなく,それらの間に存在する空白部分を3本のストライプと認識する場合などがあり,これらのことから,3本のストライプから著名なアディダスのスリーストライプス商標を想起するものと認められる。また,4本線商標かスリーストライプス商標かという相異についても,靴の甲の側面に商標として付された場合,さほど大きな区別のメルクマールになるものとはいえない。・・・

以上検討したところによれば,単に本件商標と引用各商標との外観上の類否を論ずるだけでは足りないのであって,本件商標と引用各商標(アディダスの著名商標)との構成態様より受ける印象及び両商標が使用される指定商品の取引の実情等を総合勘案すると,本件商標を指定商品「履物,運動用特殊靴」に使用したときは,その取引者,需要者において,当該商品がアディダスの業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものと認められる。

したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当し,原告ら主張の取消事由1は理由があるから,その余の点について判断するまでもなく,審決は違法として取り消されるべきである。


当初における当事者間の争いは、「3本線」か「4本線」かという「線の本数」の争いでした。
しかし、裁判所は、「4本線の商標は、それらの間の空白部分をとらえれば、3本線に見える場合もある」として、ニッセンの4本線の本件商標を靴に使用すると、需要者がアディダスの3本線の商標と混同を生じるおそれがあるとして、本件商標は無効であると判断しました。


以上
(弁理士 森本聡)

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