2013年6月4日火曜日

研修報告-米国改正特許法(先発明者出願主義)について-

先日、大阪大学知的財産センター、弁理士会等が主催する米国改正特許法に関する研修に行ってきました。

具体的な研修内容は、米国改正特許法で新たに追加された「特許付与後の有効性再審査手続」と「先発明者出願主義(First-Inventor-to-File)」についてでしたが、今回は後者の「先発明者出願主義」についてのみを取り上げます。


はじめに

新聞報道等では『今回の改正により、米国特許法が「先発明主義(※1)」から「先願主義(※2)」に移行した。』というような報道も見られますが、実情はそのような単純なものでは無いようです。

※1「先発明主義」とは、先に発明した者に対して特許権を付与するという考え方。
※2「先願主義」とは、発明の時期とは無関係に、先に特許庁に出願したもの対して特許権を付与するという考え方。

なお、改正前の先発明主義の下で「先発明」が主張されていたのは、全出願の0.1%程度であり、加えて、先発明の主張が認められるのはその中の1/3程度であり、先発明の主張が認められて特許となる発明は、従来においても極めて少なかったというのが実情だそうです。


「先発明者出願主義」と「先願主義」の共通点

「発明日」ではなく、「出願日:有効出願日」を基準に新規性、先後願を判断するという点では、「先発明者出願主義」と「先願主義」とは共通します。


「先発明者出願主義」と「先願主義」の相違点

我国の制度で言うと「新規性喪失の例外(特30条)」と「拡大された先願の地位(準公知)(特29条の2)」の規定が、「先発明者先願主義」と「先願主義」では異なります。


新規性喪失の例外に関する相違点について

我国では、特許を受ける権利を有する者(Ⅹ)が、発明(A)を開示してから、同じ発明(A)について特許出願をするまでの間に、第三者(Y)が同じ発明(A)について開示した場合には、当該第三者(Y)の開示行為が「意に反する場合」でなければ、Ⅹによる特許出願に係る発明(A)は、新規性欠如を理由として拒絶されます(Ⅹの開示行為について新規性喪失の例外の適用を受けても、第三者(Y)の開示行為により、特許出願は拒絶されてしまいます。)。

これに対して、米国改正特許法では、上記のような場合であっても、Yによる開示が発明者等又は発明者等から取得した第三者によって公に開示されたものである場合には、特許出願に係る発明(A)は、新規性を失いません。

換言すれば、Ⅹによる発明(A)の開示行為により、Yによる発明(A)の開示は新規性判断時の先行技術としては不適格なものとなり、Ⅹによる特許出願は助かる(拒絶されない)可能性があります。


また、我国の新規性喪失の例外規定の適用を受けるためには、発明の開示後、6ヶ月以内に特許出願する必要がありますが、米国では発明の開示から1年以内がグレースピリオドとなっています(開示から1年以内に特許出願すればよい。)。


拡大された先願の地位について

我国では、特許を受ける権利を有する者(Ⅹ)が、発明(A)を開示してから、当該発明(A)について特許出願をするまでの間に、第三者(Y)が同じ発明(A)について特許出願した場合には、当該第三者(Y)の出願に発明(A)が含まれていることを理由として、法第29条の2により拒絶されます(Ⅹの開示行為について新規性喪失の例外の適用を受けても、第三者(Y)の出願により特許出願は拒絶されてしまいます。))。

これに対して、米国改正特許法では、上記のような場合であっても、Yによる発明(A)の特許出願は先行技術として不適格なものとなり、Ⅹによる特許出願は助かる(拒絶されない)可能性があります。



以上のような「先発明者先願主義」の根底には、グレースピリオド中の開示を発明日の証拠と理解して、「開示」が他の発明者の発明に対する排斥効のみならず、「開示」を特許を取得する優先権を発生するという考えがあるそうです(※3)。

※3:今回の研修の講師でもあった竹中俊子先生による「L&T 54号29頁(2012年)」


以上です。
(弁理士 森本聡)


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したがいまして、法律的には正確とは言えない表現を用いている場合もあります。

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