2013年6月14日金曜日

IKEAが買い物代行業者を商標権侵害などで提訴した件


「知財情報局」のインターネットニュースによると、世界最大の家具チェー〔IKEA(イケア)〕が、無断でロゴや商品写真などを使用されたとして、大阪府茨木市の買い物代行業者を著作権侵害と商標権侵害などで提訴したそうです。


同ニュースによると、〔IKEAは、日本国内での通信販売は行っていないそうです。


一方、インターネット上には「IKEAのすべての商品が購入できます」などとうたう「買い物代行」の業者(「IKEA通販」等)が多数存在しており、顧客から注文を受けて、〔IKEAの店舗で商品を代わりに購入し、家具などは組み立ても行ったうえで、手数料を上乗せして販売しているそうです。

知財情報局のニュースはコチラです。


『無断で「IKEA」の名称を使うなんて完全にアウトやろ!』と短絡的に決め付けてしまいそうですが、どこがアウトなのか、ちょっとだけ解説をさせて下さい。


● 著作権侵害について

まず、買い物代行業者は、〔IKEAに無断で、〔IKEAの家具等の商品写真を、自己のホームページに転載していたようです。

この場合には、写真の著作権の侵害、より詳しくは写真の著作権の複製権の侵害に問われる可能性があります。サーバにアップロードしたとして、公衆送信権の侵害に問われる可能性もあります。

但し、この場合には、〔IKEAの家具等の写真の著作物性と、写真の著作権の帰属が問題になる可能性があります(あくまで一般論です)。

つまり、写真が著作物として認められるためには、創作性の要件を満たすことが必要です。このため、〔IKEAの家具等の写真が、誰が撮っても同じようなものになるような場合には、創作性に欠けるとして、著作権法上の著作物として認められない可能性があります。

逆に言うと、〔IKEAの写真が、家具等の形態が最も判り易いように、或いは商品の訴求効果が得られるように、照明やカメラアングル等々、カメラマンの種々の工夫や技術の下で撮影されたものであると認められれば、創作性の要件は満たされ、著作権法上の写真の著作物として認められる可能性は高くなります。


次に、写真の著作権の帰属が問題になるかもしれません。

つまり、〔IKEAが家具等の写真が、〔IKEAの従業員により撮影されたものである場合には、著作権者は〔IKEAということで問題は無いと考えます。

しかし、社外のカメラマンを使って撮影されたものである場合には、〔IKEAが著作権者であるか否かが問題になります。

また、社外のカメラマンから著作物の全部を譲り受けたのか、それとも著作権の一部(複製権等)を譲り受けたのかによっても事態は変わってきます。

尤も、本事案では〔IKEAは「写真の著作権が侵害されている!」と訴えたようですから、著作権者云々の問題はクリアされていると思われますが、何しろ著作権は無登録で発生するものであるため、権利者の帰属が不明瞭となり易いというのが実情です。


● 商標権侵害について

まず、登録商標(登録されている商標)の権利効力が、商標(マーク)そのものだけでなく、商品或いはサービスとの関係で決定されることは、ココの記事にも書いたとおりです。

つまり、〔IKEAの「IKEA通販」や「イケア通販」に対する商標権侵害が認められるためには、「IKEA通販」等が使用している商標(マークである「IKEA」)が、登録商標のマーク「IKEA」「イケア」と同一或いは類似していることが必要であり、さらに、登録商標で指定されている商品やサービスが、「IKEA通販」や「イケア通販」が行っているサービスと同一或いは類似していることが必要です。


さらに言うと、「IKEA」という登録商標がある場合に、どんな商品やサービスに「IKEA」と付けても一律に「アウト」ということになるわけではなく、「IKEA」の商標権の効力が及ぶのは、登録商標で指定された商品やサービスそのもの、あるいは指定された商品やサービスに類似する商品やサービスに限られるということです。


ここで、買い物代行業者である「IKEA通販」や「イケア通販」が行っているサービスが、「IKEA」や「イケア」の商標を無断で使用していることは論を俟ちません。

また、これら買い物代行業者が行っているサービスが、「小売」に該当することも論を俟ちません。これら買い物代行業者は、本家本元の〔IKEAから商品を買い、これを最終消費者に販売しているからです。

そこで、〔IKEAが保有している登録商標について調べてみると、「小売」を指定役務(サービス)とする登録商標としては、商標第5197726号(「IKEA」の標準文字)と商標第5197727号(マーク)が見つかりました。

商標第5197727号のIKEAのマーク


つまり、〔IKEAは、商標「IKEA」について「小売」を指定役務とする商標権を保有していることがわかります。

したがって、〔IKEAは、登録商標「IKEA」を無断で小売業に使用している買い物代行業者に対して、これら二つの商標権に基づいて権利行使することが可能であると考えます。

以上のように、〔IKEA側の商標権侵害云々の主張についても、これが認められる可能性は高いように思われます。


なお、〔IKEAは、家具等を指定商品とする商標権も取得しておられます(例えば、商標第1054440号)。
このような「家具」を指定商品とする商標権の効力が、「家具の小売業」にまで及ぶためには、「家具」と「家具の小売業」とが類似していると裁判所で認められる必要があります。
但し、買い物代行業者は〔IKEAから家具を購入しています。
このため、買い物代行業者側から『「家具」に係る商標権は、〔IKEAから家具を購入した時点で消尽している。』と主張されることも考えられます。


まあ、今回の事件では〔IKEA側の主張が認められて、最後は和解となる可能性がと高いと思います(結果が「判決」の形で世間に公表される可能性は低いように思います)。


●まとめ

著作権の侵害訴訟では、対象となる著作物が著作権法の保護されるだけの価値のある著作物か否かということが争われることが多い。
また、著作権(複製権等)の帰属が問題となることも多い。

商標権を侵害していると認められるためには、第三者が使用している商標(マーク)と登録商標とが同一或いは類似しているだけでなく、第三者の商品や役務と、登録商標で指定した商品や役務とが、同一或いは類似していることが必要である。

以上です。
(弁理士 森本聡)

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