2013年6月19日水曜日

「庭園」の著作権を侵害-著作者人格権について-

2013年6月18日付の「YOMIURI ONLINE」によると、

JR大阪駅北側にある複合施設「新梅田シティ」の庭園内で、積水ハウスが設置工事を進めていることを17日発表した巨大な緑化壁「希望の壁」(高さ9メートル、長さ78メートル)を巡り、庭園を設計した造園家吉村元男さん(75)が「庭園の統一されたデザインが損なわれ、著作権を侵害する」として、同社に工事中止を求める仮処分を19日、大阪地裁に申請する」とのこと。

また、同ニュースによると、

吉村さんは、庭園は「森との共生」「水の誕生とその循環」を理念として緻密な計算のうえデザインしたもので、思想を創作的に表現した著作物にあたる、と指摘。そのうえで、緑化壁の設置は、作品の同一性を保つ著作者の権利を侵害する、と主張している。仮処分裁判では、〈1〉庭園は著作物にあたるか〈2〉著作物にあたる場合、緑化壁の設置は庭園設計者(吉村さん)の権利を侵害するか――が争点になる見通し。」とのこと。

「YOMIURI ONLINE」のニュースはコチラです。


造園家の吉村氏が設計したのは「庭園」であって「緑化壁」でなく、そうすると、「緑化壁を設置することは、吉村氏の著作権を侵害することにはならないのでは・・・』というような疑問を持たれた方。

このブログ記事では「著作権」について簡単に解説させて頂きますので、是非一読してみて下さい。



「著作権」は、一つの権利ではないということ

まず、著作権法で著作者に認められる権利は、「人格的な権利」と「財産的な権利」に大別できます。

前者は、「著作者人格権」といい、著作者のみに認められる権利です。

後者は、「狭義の著作権」とも呼ばれるものであり、著作者から第三者に譲渡可能な権利です。

著作権=(著作者人格権)+(狭義の著作権)

上記のように、「著作者人格権」は、著作者のみに認められるものであり、譲渡できないものであるのに対して、「狭義の著作権」は譲渡が可能です。

このため、著作者から「狭義の著作権」を譲渡された場合であっても、「著作者人格権」は、以前として著作者に残っているということになります。

換言すれば、「著作者人格権」を保有している「著作者」と、「狭義の著作権」を保有している「著作権者」とが別人であるということは多々あることです。


著作者人格権について

著作者人格権は、「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」の3種からなります。

■ 公表権とは、著作者が、著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供したり、展示したりする権利です。
(つまり、著作物の公表時期は、著作者が決めることができるという権利です。)

■ 氏名表示権とは、著作物の原作品に公衆への提供時に、著作者が実名や変名を表示したり、表示しないことを決めることができる権利です。

■ 同一性保持権とは、著作者は著作物の同一性を保持することができるという権利です。
(つまり、著作者の意に反して、著作物の変更や改変はされないという権利です)


狭義の著作権について

「狭義の著作権」を列挙すると、以下の如くとなります。

①著作物を複製する権利である「複製権」
②著作物を公に上演し、又は演奏する権利である「上演権」「演奏権」
③著作物を公に上映する「上映権」
④著作物をサーバーにアップデートする「公衆送信権」
⑤著作物を公に口述する「口述権」
⑥美術の著作物や写真の著作物を原作品により公に展示する「展示権」
⑦映画の著作物を複製物により頒布する「頒布権」
⑧著作物を譲渡する「譲渡権」
⑨著作物を貸与により公衆に提供する「貸与権」
⑩著作物を翻訳、編曲、変形、その他翻案する「翻訳権」「翻案権」


以上を踏まえたうえで、上記のニュースを見てみると、以上のことがわかります。

まず、造園家吉村氏は、「緑化壁の設置は、作品の同一性を保つ著作者の権利を侵害する」と主張しておられます。

このことから、吉村氏は、緑化壁を設置することは、著作者人格権の「同一性保持権」の侵害だと、主張しておられることがわかります。

さらに具体的に言うと、緑化壁を設置することは、自己の「庭園」に係る著作物の「意に反する変更」、或いは「意に反する改変」に該当するから、緑化壁の設置行為は同一性保持権の侵害にあたる、と主張しておられることがわかります。

また、ニュースにはありませんが、緑化壁を設置することが、著作物の変形に該当すると考えた場合には、狭義の著作権の「翻案権」の侵害だと主張することも可能であると考えます(尤も、庭園の著作権(狭義の著作権)が、著作者の手から離れている場合には、上記主張は不可能となります)。

以上のように、このニュースに係る事案では、造園家が創作した「庭園」の著作物をコピーした云々ということで著作権侵害が問題となっているのではなく、著作者である造園家が創作した「庭園」の著作物を意に反して改変されようとしているとして、著作者人格権の「同一性保持権」の侵害が問題となっています。


まとめ

著作権とは、「著作者人格権」と「狭義の著作権」とで構成される。

「著作者人格権」は、著作者固有の権利であり、譲渡できない。

このため、「狭義の著作権(複製権等)」の譲渡を受けても、「著作者人格権」の侵害に問われる可能性がある。


以上です。
(弁理士 森本聡)


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したがいまして、法律的には正確とは言えない表現を用いている場合もあります。

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