2013年6月5日水曜日

ライト兄弟と特許戦争

今回のテーマは、動力飛行機の動力飛行機の開発者として、また、動力飛行機による有人飛行に世界で初めて成功したパイロットとして広く知られるライト兄弟(ウィルバー・ライト(Wilbur Wright 1867年4月16日~1912年5月30日)、オーヴィル・ライト(Orville Wright 1871年8月19日~1948年1月30日))についての話題です。

ライト兄弟は、1903年に12馬力のエンジンを搭載した「ライトフライヤー号」を完成し、同年の12月17日に、ノースカロライナ州キルデビルヒルズの砂丘で人類初の有人動力飛行に成功しました。
ライトフライヤー号の初飛行

ライド兄弟が初飛行に成功した時の写真(上記写真)は、地元の海難救助所員(ジョン・T・ダニエルズ)が撮ったもので、その時の観客は僅か5名だったそうです。


ライトフライヤー号には、一方のプロペラチェーンを8の字に掛けることで左右のプロペラを逆回転させて、プロペラから発生する回転トルクを打ち消すといった工夫のほか、主翼を変形させてたわませる(捻らせる/ひねらせる)「たわみ翼」、プロペラの先端を切り取る「ベントエンド・プロペラ」といった種々の斬新な技術が採用されていました。

たわみ翼

ここまでの話は、偉人伝などにも掲載されている内容であり、皆さんも良くご存知だと思います。


■ 特許権者としてのライト兄弟


一方で、ライト兄弟は特許権の取得にも熱心でした。


具体的には、上述の1903年12月の初飛行に先立って、同年の3月23日に米国特許庁に「たわみ翼」に関する特許出願を行い、1906年に特許権を取得しています(Flying Machine 821,393)。

ライト兄弟が特許発明の図面


また、この米国特許出願を基礎として、英国やフランスにも特許出願を行い、これらの国でも特許権を取得しています。

それ以外にも、私が調べた範囲では、ライト兄弟の名前で検索すると、20件以上の特許公報がヒットしました。


■ 飛行成功後のライト兄弟の苦悩

以上のように、ライト兄弟は「飛行機」という大発明をなしとげたにもかかわらず、その後の人生には苦悩も多かったようです。

まず、ライト兄弟自信が「特許権」に固執しすぎました。


ライト兄弟が完成した発明は「たわみ翼」に関するものであったにもかかわらず、兄弟はこれを「飛行原理」と広く解釈しました。

具体的には、特許権の効力は「翼をたわめる」という方法論だけではなく「左右の翼の揚力を変えることによって機体をロールさせる」という原理にまで及ぶと考えました。


そして、ライト兄弟は特許権の行使に徹底的にこだわり、他のライバルの発明者や開発会社に対して各国で特許訴訟を乱発しました。


特に、ライバルであるカーチス(Glenn Curtiss)が開発した補助翼「エルロン」に対する法定闘争はたいへん熾烈なものだったそうです。結果は、ライト兄弟が勝訴したそうです。


しかし、このようなライト兄弟の対応のために、多くのパイオニア達が新しい飛行機の開発を断念し、航空技術は停滞してしまいました。特に米国の航空技術の進歩発展への悪影響は甚大であり、米国の航空技術はフランスに大きく遅れをとることになりました。


このため1917年に政府が介入し、ライト兄弟に対して他社に特許をライセンスするよう命じました。これにより、ようやく飛行機のイノベーションが本格的に始まったそうです。


また、ライト兄弟自信が「たわみ翼」に固執したため、次第に時代から取り残されていくことになりました。
つまり、「たわみ翼」に関する特許権の消滅後も「たわみ翼」の技術に拘り、新たに開発する飛行機に補助翼「エルロン」を採用することはなかったため、彼らの飛行機は次第に時代遅れなものとなりました。


ライト兄弟が設立した「ライト社(その後のライト航空会社)」は、先のカーチスが設立した「ヘリングカーチス社」と1929年に合併して、「カーチス・ライト」社となりました。
「カーチス・ライト社」は、「カーチスP-40」といった第二次世界大戦で活躍した戦闘機を作り全盛期を迎えましたが、1946年にノースアメリカン社に吸収されました。


1942年に弟のオーヴィルは、自動車王ヘンリー・フォードに対して、自分が動力飛行機を発明したことを悔いる内容の手紙を送ったそうです。
また、翌年の1943年にアメリカ特許局設立150周年記念行事に参加した際には、最近100年間の十大発明は何かと問われ、あえて飛行機をその中から除外したそうです。


まとめ(感想)

「特許制度」とは、発明を保護だけでなく、発明の利用を図ることにより、産業の発達に寄与することを目的とするものです。

このような特許制度の目的に鑑みれば、完成した発明が人類の進歩発展に大きく貢献する「大発明」である場合には、「第三者の利用」を抑制するだけでなく、ロイヤリティといった特許権者が受け得る利益とのバランスを取りながら「第三者の利用」を適切にコントロールする新たな術(制度)を考える必要があるのかもしれません。

この点は、「特許の標準化」とも繋がる、特許制度の今度の課題とも言えそうです。

以上です。
(弁理士 森本聡)

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■ 特許の標準化について


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